平成30年11月臨時会
第3号11月27日
○議事日程  
平成30年11月臨時会

 鎌倉市議会11月臨時会会議録(3)

                                      平成30年11月27日(火曜日)
〇出席議員 26名
 1番  千   一   議員
 2番  くりはらえりこ 議員
 3番  竹 田 ゆかり 議員
 4番  中 村 聡一郎 議員
 5番  志 田 一 宏 議員
 6番  長 嶋 竜 弘 議員
 7番  武 野 裕 子 議員
 8番  西 岡 幸 子 議員
 9番  日 向 慎 吾 議員
 10番  飯 野 眞 毅 議員
 11番  池 田   実 議員
 12番  久 坂 くにえ 議員
 13番  森   功 一 議員
 14番  安 立 奈 穂 議員
 15番  高 野 洋 一 議員
 16番  納 所 輝 次 議員
 17番  永 田 磨梨奈 議員
 18番  高 橋 浩 司 議員
 19番  山 田 直 人 議員
 20番  前 川 綾 子 議員
 21番  河 村 琢 磨 議員
 22番  伊 藤 倫 邦 議員
 23番  保 坂 令 子 議員
 24番  吉 岡 和 江 議員
 25番  大 石 和 久 議員
 26番  松 中 健 治 議員
     ───────────────────────────────────────
〇欠席議員 なし
     ───────────────────────────────────────
〇議会事務局出席者
 事務局長        大 隅 啓 一
 次長兼議事調査課長   木 村 雅 行
 議事調査課課長補佐   笛 田 貴 良
 議事調査担当担当係長  窪 田 敬 司
 書記          片 桐 雅 美
 書記          鈴 木 麻裕子
     ───────────────────────────────────────
〇理事者側説明者
 番外 1 番  松 尾   崇  市長
     ───────────────────────────────────────
〇議事日程
                鎌倉市議会11月臨時会議事日程(3)

                               平成30年11月27日  午後2時開議

1 諸般の報告
2 議案第52号 鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について     総務常任委員長
                                      報     告
     ───────────────────────────────────────
〇本日の会議に付した事件
 議事日程に同じ
     ───────────────────────────────────────
                鎌倉市議会11月臨時会諸般の報告 (2)

                     平成30年11月27日

1 11 月 22 日 総務常任委員長から、次の議案について委員会の審査を終了したので、本会議に報
          告したい旨の届け出があった。
  議 案 第 52 号 鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について
  議 案 第 52 号 鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例に対する修正案(別紙)
     ───────────────────────────────────────
                   (出席議員  26名)
                   (14時00分  開議)
 
○議長(中村聡一郎議員)  定足数に達しましたので、これより本日の会議を開きます。
 本日の議事日程は、配付いたしましたとおりであります。
 会議規則第142条の規定により、本日の会議録署名議員を指名いたします。25番 大石和久議員、26番 松中健治議員、1番 千一議員にお願いいたします。
     ────────────〇─────────────〇────────────
 
○議長(中村聡一郎議員)  日程第1「諸般の報告」を議題といたします。
 内容は配付いたしましたとおりであります。
 ただいまの報告に御質疑ありませんか。
                   (「なし」の声あり)
     ────────────〇─────────────〇────────────
 
○議長(中村聡一郎議員)  日程第2「議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について」を議題といたします。
 総務常任委員長の報告を願います。
 
○総務常任委員長(保坂令子議員)  (登壇)ただいま議題となりました議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について、総務常任委員会における審査の結果を報告いたします。
 本件は、地方自治法第74条第1項の規定に基づき条例制定請求代表者6名から市長に対し、鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例制定の直接請求が行われたもので、それを受け、市長から条例制定議案が同条第3項の規定に基づき意見を付して、議案第52号として提出されたものであります。
 議案第52号は、去る11月22日開会の本会議において、同条第4項の規定に基づく条例制定請求代表者6名による所要の意見陳述を受けた後、当委員会に付託されたもので、直ちに委員会を開き審査いたしました結果、次の結論を得たのであります。
 まず、条例制定請求代表者から市長に提出された請求の要旨によれば、本市は市役所本庁舎を深沢地域整備事業用地に移転する計画を発表し、現在、鎌倉市本庁舎等整備委員会を立ち上げ、本庁舎整備基本構想を策定するための検討を行っている段階であり、このままでは移転計画が進められ、既成事実化することから、計画の策定に当たっては市民の声を反映するよう考え、同条第1項の規定に基づき、本庁舎の整備に関する住民投票条例を市長に制定するよう求めたものであります。
 市長に提出された条例案の主な内容は、第1条では本条例の趣旨についての規定を、第2条では住民投票の実施に当たり投票における選択肢を「本庁舎の深沢移転に賛成」または「深沢移転に反対」とする旨の規定を、第3条では住民投票の執行については市長が執行するものとし、地方自治法第180条の2の規定に基づく協議により、その権限に属する住民投票の管理及び執行に関する事務を選挙管理委員会に委任することができる旨の規定を、第4条では住民投票の期日について、本条例の施行日から起算して70日を経過する日までの間において市長が定める旨等の規定を、第5条では住民投票における投票有資格者についての規定を、第6条では投票の方式についての規定を、第7条では投票所における投票についての規定を、第8条では無効投票についての規定を、第9条では住民投票の適正な執行の確保のため、市長が市民に必要な情報を提供するよう努める等についての規定を、第10条では住民投票に関する投票運動は自由である旨の規定を、第11条は開票についての規定を、第12条は投票結果の効力について、市長及び市議会は、住民投票の結果が地方自治法の定めた市民による民意を十分に反映したものであるとの趣旨から、これに拘束されねばならない旨の規定を、第13条では本条例の施行について必要な事項は規則で定める旨の規定をそれぞれ定めようとするもので、公布の日から施行しようとするものであります。
 当委員会では、まず、審査の冒頭に、一部委員から、議会基本条例の規定を踏まえ、議案に対し論点を整理し、真摯な議論を進めるため、また本条例案の第1条に記載されている目的を達成するためにも、条例制定請求代表者に参考人として出席を求め質疑を行いたい旨の発議があり、さらに議長から、地方自治法第105条の規定に基づき、本市として38年ぶりの直接請求であり、かつ8,270人の市民の署名を伴った重みがある直接請求であること、さらに条例制定請求代表者による意見陳述において議案の修正についても言及されていたことも踏まえ、より慎重かつ丁寧な審査をお願いしたい旨の発言があり、これを受け参考人招致について協議した結果、条例制定請求代表者から提出されている条例案及び請求の要旨に加え、意見陳述により考え等を十分に聞くことができたこと、また市長の意見書に対する審査に時間を割くべきとの意見が出され、多数により出席を求めないこととしたものであります。
 理事者の説明によれば、住民投票が間接民主制を補完するための市民参加制度の一つとして位置づけられていることは認識しているものの、本庁舎の移転整備は本市の将来を見据えた重要な事業であることから、時間をかけてさまざまな角度から議論を重ね、その過程においては、広く市民や知見を有する方などの意見聴取に努めるとともに、議会にも報告等を行った上で、必要な予算について議決を得ながら事業を進めてきたところであり、住民投票により、単に深沢地域への移転に賛成か反対を問うことは、これまで多くの方々と丁寧に議論して築き上げてきた結果と過程をないがしろにするものであり、到底容認できるものではないとのことであります。
 また、本条例第2条中、「本庁舎の深沢移転に賛成」と「深沢移転に反対」の二つの選択肢を示し、市民の意思について一括して深沢地域への移転に賛成または反対のいずれかを選択することを求めているが、この二つの選択肢だけでは、市民の明確な意思を示すことは困難であり、本庁舎の整備をどのように行うべきと考えているのかを問うことはできないこと、住民投票の成立要件についての規定がないため、他の自治体の例に鑑み、投票の成立要件として、投票資格者総数の2分の1以上の投票数とする規定を設けることが望ましいこと、「市長及び市議会は、住民投票の結果に拘束されねばならない」という趣旨について、地方自治法第4条の規定に基づき、本庁舎の位置は、出席議員の3分の2以上の賛成をもって条例により定めなければならないものであるものの、本条例案第12条中「投票結果の効力」は、市長及び市議会は住民投票の結果に拘束されねばならない旨を規定しており、通常の議決よりもさらに重い特別多数議決により議事を決する市議会の権限を無にするものであることから、本規定は法令に違反する疑いが極めて高く、本条例を制定することは地方自治法第14条第1項の規定に違反すると思料されること、さらに、本条例に基づいて住民投票を実施する場合の問題点として、投票有資格者の居住要件や公職選挙における欠格事項に該当するものの取り扱いが明確にされていないこと、投票の方式、資格者名簿の調製の要否、投票所及び期日前投票所の設置箇所数等基本となる事項が定められていないこと等が挙げられているほか、誤字や条例立案技術上の問題が散見されるとのことであります。
 以上の説明を聴取するとともに、担当原局及び理事者に対し質疑を行った後、高野洋一委員から、本条例案は8,270人の署名をもって請求されたものであり、市民の意思を最大限に尊重した対応を行うことが議会に求められると考えられることから、根幹となる条例の精神や判断基準は変更せず、あくまで技術面や違法性の疑いのある規定を改善することにより実効性ある条例にするとの理由から、原案に対する修正案が提出されたのであります。
 修正案の主な内容は、第2条において、住民投票に係る選択肢について、「深沢」としている言葉の定義を明確にし、第5条において、投票有資格者に関する規定を整理し、第8条において、無効投票の事項に、他事記載に係る規定を追加し、第12条における投票結果の効力については、市長及び市議会は住民投票の結果に拘束されねばならない旨の規定を、「市長及び市議会は、住民投票の結果を尊重しなければならない。また、住民投票の総数が投票有資格者の総数の2分の1に達したときは、その結果の重みを十分に考慮しなければならない。」とするとともに、住民投票の実施において必要な事項の追加、文言等の整理を行おうとするものであります。
 当委員会では、原案に対する修正案を原案とあわせて議題とし、提出者から提案説明を聴取した後、提出者へ質疑を行うなど、慎重に審査いたしました結果、次のような相違する意見に分かれたのであります。
 一つは、現時点で住民投票を行うことの必要性、有効性、効率性、公平性、協働性等の視点から見たときに異を唱えざるを得ないこと、また本庁舎を深沢に移転するか否かのみを市民に問う内容の住民投票であり、基本構想等が策定されていない段階で移転の是非を問うことは、いたずらに市民を分断することにつながりかねず、将来の鎌倉市政、市民活動に禍根を残すおそれがあるため、まずは本庁舎移転に係る市民との情報共有のレベルを高めることが必要であること、さらに8,270人の市民が署名したことを非常に重く感じており、条例案を修正することは署名した人全員に納得を得られるか疑問であることから、もう少し時間をかけて市民の思いを形にしていかなければいけないとの意見であります。
 もう一つは、住民投票を実施することで、市民を分断するおそれについては理解できるものの、投票運動は自由であり、一人一人が説得の材料を探していくことは、鎌倉市政にとって財産となる可能性があること、また、本庁舎移転について、立ちどまるべきとの問いかけに対しても、そのような意思は市長からは示されず強引に進めていこうとしていること、さらに条例の修正権は議会にあるため、民意を受けとめるために修正することについては問題ないとの意見であります。
 以上のような異なる意見が出された後、まず修正案について採決を行った結果、可否同数となったため、委員長裁決により可決すべきものと決し、さらに修正部分を除く原案について採決を行った結果、可否同数となったため、委員長裁決により可決すべきものと決したのであります。
 以上で報告を終わります。
 
○議長(中村聡一郎議員)  本件は、会議規則第49条の規定により、質疑及び討論の区分を省略いたします。
 ただいまの委員長報告に対する御質疑または原案及び修正案に対する御意見はありませんか。
 
○9番(日向慎吾議員)  ただいま議題となりました、議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について、並びに同条例の修正案について、ともに反対の立場から鎌倉夢プロジェクトの会を代表して討論に参加いたします。
 まず、反対理由を申し述べる前に、8,270人にも上る署名を集められ、制度にのっとり直接請求をされました御苦労について、真摯に重く受けとめるとともに敬意を表したいと思います。また、多くの皆様に直接請求の行動をとらざるを得ない状況をつくってしまったことは、本庁舎を深沢地域整備事業用地内へ移転する件に関し、審議経過を長年にわたり報告を受けてきた議会として広報や意見集約をする行動が不足していたと反省しなければならないとも思います。さまざまな施策の結論を出していく際、議会の重要な役割の一つに、多くの市民の皆様の御意見を伺い、衆知を集め、結論を出していくということがあります。ときに伺った意見の中に相反する意見があったとしても、互いが争い合ったり、いがみ合ったりしないよう時間をかけて、遺恨を残さず結論を出していくことが肝要と考えます。そういう意味で、直接請求された皆様には、このたびの条例案の結果のいかんにかかわらず、今後もさらに積極的に行政機能の再編計画に御参加いただき、全市民にとってよりよいものになるようお力添えを賜り、議会へも叱咤激励賜れば幸いです。
 さて、前置きが少し長くなりましたが、早速、このたびの条例案に対する意見を述べさせていただきます。
 まず1点目は、第2条に関する件で、過日、台湾の総選挙が終わり、さまざまな課題を住民投票していたことが報道されていましたが、日本でも政府や基礎自治体は案件によって直接民主主義の住民投票制度を積極的に取り入れた運営をしていくことを大いに推進すべきと考えるものではありますが、深沢地域整備事業用地内へ移転することに賛成か反対かを投票で決することを求めることは、前述のとおりまさに住民の対立を誘発する内容であり、こうした案件は住民投票にはなじまないと考えるものであります。
 2点目は、第12条に関する件で、鳥取市の例を挙げて投票結果の効力に拘束条項を付記しない場合、裁判での有効性が担保できないと意見陳述されておられたように、署名された多くの皆様は拘束条項を入れることに大きな意味を持って署名されたことと理解しております。しかし、現行法の中では、まさにこの拘束条項が違法であると解釈されていることから、残念ではありますが、違法な条項を認めることはできないのであります。
 では、修正案では、拘束条項を尊重規定に変更したのだからよいのでは、との議論もありますが、まさにこの拘束条項こそこの条例の重要なポイントであり、そこを議会で修正することは署名者の意に沿うものなのか、確認できません。誤字脱字の類いを微修正することは大した問題ではないと考えますが、基本的には長文を添えて署名をいただいたからには、原案を議会で修正することは厳に慎むべきと考えるものであります。
 以上、2点が条例案に反対する主な意見でありますが、この際、意見陳述や総務常任委員会での議論で出された案件についても触れておきたいと思います。
 意見陳述の中で、生涯学習センターや中央図書館がなくなることは困るとの御意見がありましたが、どこでそのような情報をお聞きになられたのか。生涯学習センターや中央図書館は、老朽化や耐震対策のため、現在の本庁舎の場所に複合施設として建てかえをする計画はあるものの、なくすような議論は一度もされておりません。参考人としてお呼びし、この点を初め、そごがあるような点の確認が行われなかったことは残念でありましたが、今回の条例案の署名をとる際、間違った情報に基づき、その情報を信じて署名された方が多くおられたとしたら、いかがなものでしょうか。今一度正確な情報を御確認賜れば幸いです。
 次に、本庁舎移転の根幹にかかわる津波に関し、触れておきたいと思います。
 平成21年に改訂した神奈川県の津波ハザードマップは、大正12年の関東大震災の津波被害を前提に作成されたもので、鎌倉市発行のハザードマップは、現在、最大の被害を想定し、その際の神奈川県の津波ハザードマップを採用して作成してあります。その後、国の想定が出され、平成27年に神奈川県の津波ハザードマップが改訂され、現在の本庁舎の立地場所はほぼ津波が来ないと想定されましたが、津波が50センチ押し寄せてきたら、ほとんどの方が流される状況に陥るので、過去の経験から最大の津波エリアを想定して、行政計画を作成することは当然しかるべきと考えるものであります。
 また、本庁舎の移転先と考えている深沢地域整備事業用地では、通常30年に一度の浸水に対するハード面のカバーを求められているところ、300年に一度の浸水に耐え得るハード面のカバーを想定しており、千年に一度の浸水に対しては、12時間以内に浸水がおさまるとの神奈川県の見解もあり、避難を前提とするソフト面からのアプローチを前提に対応を図ろうとしています。この点は、コスト面から評価してもいたし方ない対応と考えるものであります。しかし、柏尾川上流域における貯水槽が充実してくれば、千年に一度の浸水にも対応できる可能性があり、神奈川県と連携を図りながら上流域自治体へも協力要請を強力に推進していただくよう、求めておきたいと思います。
 以上でありますが、行政におかれましては、これまで以上に市民の意見の衆知に努めていただきますことをお願い申し上げ、討論を終わります。
 
○14番(安立奈穂議員)  神奈川ネットワーク運動を代表し、議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について、修正案及び修正部分を除く原案に賛成の立場で討論に参加いたします。
 市民の政治参加を進めることをみずからの活動の課題に据えてきた私たち神奈川ネットは、市民が政治的意思の決定に直接参加する住民投票には大きな意義があると考えます。住民投票は、間接民主主義を否定したり侵害するものではありません。間接民主主義と直接民主主義の両方が機能することで市民自治が前進すると捉えるべきです。地方自治法に定められた有権者の2%以上という要件を上回る5%、8,270人分の連署による条例制定を請求された市民の意思を重く受けとめると口では言いつつ拒否するのは、議会のあり方としては非常に疑問だと言わざるを得ません。
 さて、ここから修正案の修正された部分を中心に本件条例案について意見を述べさせていただきます。
 本件、住民投票条例案は、本庁舎の深沢移転に賛成か反対かを問う住民投票について定めたものです。第2条に掲げられているこの選択肢の設定に対してさまざまな異論があるのは承知していますが、原案の根幹の部分であるので修正案では深沢という場所の明確化のみを行って、ほかは原案を踏襲しています。深沢移転に賛成、反対を問う選択肢が示されたことには、深沢移転という方針に基づいて、これに異議を唱える市民にきちんと向き合わずに事業を進めようとする市に対して、立ちどまるように求める意図があることも、条例制定請求代表者の意見陳述において明らかになりました。
 修正案の一番大きな変更箇所は第12条です。松尾市長は、議員が条例案に反対しやすいように、否決のための理由を満載した市長意見を示されました。その中で特に字数を割いて問題視しているのが、市長及び市議会は住民投票の結果に拘束されなければならないとした条例原案の第12条です。条例に基づく住民投票の結果に法的拘束力を持たせるのは間接民主制と整合しないことが裁判所の凡例で指摘されており、総務省も拘束的住民投票は、法律に根拠がある場合のみ可能と解されていることから、条例原案の第12条が違法性を問われるのは免れません。
 そこで、修正案では多くの住民投票条例の先例に倣い、市長及び市議会は住民投票の結果を尊重しなければならないとの文言に変わっています。これにより違法性の指摘は当てはまらなくなりました。また、この修正により住民投票の成立要件についての規定がないため、市民の少数意見だけが反映されるおそれがあり、その結果は民意を十分に反映したものとはならないという市長の指摘も当てはまらなくなりました。市長及び市議会は住民投票の結果を尊重しなければならないという修正案の条文は諮問型であり、その結果に拘束されないという前提に立てば、市長や議会は投票率や投票結果における賛成・反対の割合などさまざまな結果を勘案した上で尊重義務を果たすことになるからです。成立要件を設ける特段の必要性はなくなります。その意味で第12条は「住民投票の結果を尊重しなければならない。」とするだけでも事足ります。実際に、多くの先例ではそのようになっています。
 しかし、修正案では第12条の後段に、「また住民投票の総数が投票有資格者の総数の2分の1に達したときは、その結果の重みを十分に考慮しなければならない。」の文言が付されています。この部分には、市長が意見書の中で、投票の成立要件は投票資格者総数の2分の1以上の投票数とすることが望ましいと考えると述べることに配慮した側面もありますが、投票率や投票結果における賛成・反対の割合など、さまざまな結果を勘案した上で、尊重義務が果たされるということの理解を助ける尺度としての側面もあります。例えば、賛成・反対のいずれか一方の票数が僅差でほかを上回った場合や、投票率が低いために得票率、すなわち過半数を得た票の投票資格者総数に対する割合が著しく低いものであった場合があっても、有効投票の過半数さえとれば、賛成・反対のいずれか一方の票数がほかを圧倒した場合や投票率の高さと連動して得票率が高い場合と同様に民意として尊重されるのかといえば、そうではない、同等ではないということです。
 諮問型における投票結果の尊重の尺度としては、本件修正案のように投票率を示す場合もありますが、所沢市では2015年2月に実施された住民投票に係る条例のように、得票率を示した例もあります。所沢市条例では、「市長および市議会は住民投票の結果を尊重しなければならない。 この場合において、 投票した者の賛否いずれか過半数の結果が投票資格者総数の3分の1以上に達したときは、その結果の重みを斟酌しなければならない。」としています。
 以上、第12条を「住民投票の結果を尊重しなければならない。」と修正したことにより、違法性を問われるおそれがなくなり、成立要件をつける必要もなくなったこと。成立要件ではなく、投票結果の尊重の尺度となる文言が付されていることについて述べました。
 第12条に関連して、もう少しつけ足します。条例案が付託された総務常任委員会では、一部の委員から修正条例案の実効性について疑問視する意見が出ました。条例に基づいて住民投票を実施しても、民意は明確にならない。あるいは、諮問型の条例であるため、住民投票の結果をどう本庁舎整備事業に反映させるかは、市長の受けとめ方次第であり、住民投票を行う意義が認められないという意味ではないかと思います。しかし、この指摘は裏を返せば、市長に修正第12条を真摯に受けとめる姿勢と、住民投票の結果を読み解くリテラシー、結果を受けとめる受容力があれば、条例の実効性はおのずと発揮されるということでもあります。
 最後に、市長が住民投票により単に深沢地域への移転に賛成か反対かを問うことは、これまで多くの方々と丁寧に議論して築き上げてきた結果と過程をないがしろにするものであり、到底容認できないと意見書に書かれたことについて申し上げます。
 多くの方々と丁寧に議論して築き上げてきた結果と過程というのは、本当にそうなのでしょうか。納得せず、置き去りにされていると考える市民の方がたくさんいることのあらわれが、本件直接請求ではありませんか。その方たちが一旦立ちどまって住民投票で市民の意思を確認してほしいと求めるなら、議会は拒絶するべきではありません。そして、市長は直接請求がされたことを本当に重く受けとめるのなら、住民投票は容認できないとして議会に否決を要請するのはおかしいです。住民投票を実施しないのは、鎌倉市政にとって大きな禍根となるのではないかと懸念します。
 以上で、討論を終わります。
 
○19番(山田直人議員)  鎌倉みらいの山田でございます。まず、意見書にある「本件は、8,270人分の連署をもって請求されたものであり、本件請求の意味の重さを真摯に受けとめている。」と。このことについては、改めて本議場に出席している議員、理事者で共有したいと考えます。
 そして、本議案の討論に入る前に申し上げたいことがあります。付託された総務常任委員会において、請求代表者を参考人としてお呼びし、質疑を通して意見をお聞きする機会を与えていただきたいと提案をいたしました。議会基本条例第6条第5項、その要旨は、公聴会制度、参考人制度を積極的に活用するというものでございますが、さらに先ほど委員長報告にありましたとおり、議長より丁寧な審議をとの発言もありながら、参考人としてお呼びすることができなかったことは大変残念でありました。その理由が、これまで議会以外の場で十分お聞きしてきたとか、本会議場で請求代表者の意見をお聞きしたとか、付託された委員会の責任として、まさにその現場で質疑を通して意見をお聞きし、議論する機会が与えられなかったことは、議会基本条例を貫く開かれた議会の精神にそぐわないものであったと考えております。請求代表者の方々の思いを果たして十分かなえることができたんでしょうか。審議時間が残されていたにもかかわらず、多数で決められたことと承知しながらも、いまだ腑に落ちておりません。いずれまた総務常任委員会に参考人として出席いただく機会があればいいかなと考えているとともに、改めて議長には議会基本条例の検証を行うようお願い申し上げておきたいと思います。
 それでは、修正案に反対、修正部分を除く原案に反対の立場で討論いたします。
 これから、深沢という言葉を多用しますが、これは深沢地域整備事業用地内の行政施設用地であることを御承知願いたいと思います。
 請求代表者の一人の発言から、他自治体の例を引き合いに出して、強くこだわっていらっしゃるのは第12条だとお聞き取りいたしました。すなわち、「市長及び市議会は住民投票の結果に拘束されねばならない。」というものです。一方、本条は法令違反の疑いが極めて高いとして、地方自治法第14条第1項の規定に違反するとの意見書を参考に、「住民投票の結果を尊重しなければならない。住民投票の総数が投票有資格者の2分の1に達したときは、その結果の重みを十分に考慮しなければならない。」とし、法令違反を除くべく修正をされました。いかに拘束を求めた原案が法令に違反する疑いがあれども、この第12条の修正案では連署された8,270人の思いが実現できないのではないでしょうか。そして、第12条を大きく修正したこと。第3条、第10条以外について、原案を尊重しながらも意見書に沿う形の条例として、議会審議ができる修正を加え、提案された御努力は認めますが、このことで住民投票が手段ではなく目的となってしまったのではないかと強く感じるのは私だけでしょうか。
 「広報かまくら」5月1日号1面に、「災害に強いまちを目指して、本庁舎は深沢地域整備事業用地に移転します。」と掲載されたことから始まった住民投票条例の制定の請求を求める8,270人の連署は、それだけで修正案第12条にあるとおり成立要件の規定がなく、結果を尊重するに足るものであり、「住民投票の総数が投票有資格者の2分の1に達したときは、その結果の重みを十分に考慮しなければならない。」との規定によらずとも、冒頭皆さんで共有したとおり、その意義の重さを真摯に受けとるべきものであります。
 修正案にある深沢移転に賛成、深沢移転に反対だけではなく、例えば、場所を問わずよりよい行政サービスを提供してくれる市役所を、との第三の意見を持つ市民は、投票行動に結びつかなかったり、無効投票という選択をすることにもなるかもしれません。そして、住民投票の総数が投票有資格者の2分の1に達した結果が深沢移転に賛成となった場合は、その重みを十分考慮し、深沢に移転しなければならないのか。深沢移転に反対となった場合は、その重みを十分に考慮し、ここにとどまらなければならないのか。そして、第三の意見が最多数となった場合はどうすればいいのか。今、これらの結果を予断を持って語ることはできませんが、いずれにしても、行政決定された深沢移転に対し、そして、これからの市役所のあり方を議会において議論する中で、行政のチェック機関である議会がその責任を果たし、住民投票という手段をとらずとも、修正案第12条に規定する内容の趣旨を満たすことが可能であると考えます。議会の論議をその信頼たるものに深めていこうではありませんか。
 立法事実の観点について、第1条の市あるいは市長、これは修正の場合ですが、市長、並びに議会に民意を示すとの目的と、市民の意思を明らかにするための住民投票を行うとの手段を結びつける社会的事実として、深沢移転がそれに足るものなのでしょうか。そう考える理由は、行政決定でしかなく、基本構想すら正式にでき上がっていない現段階において、そして住民投票の前提となる適切な資料の提供を求めている現段階において、さらに平成27年に公表された津波浸水予測図をもとに作成された津波浸水想定図の周知、例えばハザードマップへの反映等がされていない現段階において、加えて一丁目一番地とされる防災についての議論を主体としつつも、全体最適の議論には遠く及んでいない現段階において、果たして目的を果たす手段が住民投票なんでしょうか。そのように考えることができません。
 次に、条例の評価について申し上げます。
 まず、適法性については、修正案第12条の修正をもって法令に違反する疑いは解消されたと考えます。
 次に、必要性についてです。さきに述べたとおり、本件請求の意義の重さを真摯に受けとめることにより、今後の議会における議論の中でここに示された直接請求という民意を酌み取っていくことが大切と言えます。住民投票という手段をとり、その結果を得ることが、かえって今後の議論に深く影を落とすことになるのではないでしょうか。その意味で、本条例を制定する必要性はないと考えております。
 次に、有効性についてです。さきに言及した第三の意見を有する投票有資格者や、鎌倉地域・深沢地域以外にお住まいの市民、今後50年以上を見据え、これから長く市役所とかかわる子供たちの意見、どう考えればいいのか。これらを考慮するとき、今、深沢移転の是非のみを問う住民投票は、その有効性を減ずることになるのではないかと危惧しております。
 次に、効率性と公平性をあわせて述べます。さきに述べたとおり、深沢移転は行政決定の段階です。深沢が選択された大きな理由の一つに、市有地であることが挙げられます。その理由を基礎に、全体最適の観点から、現在は深沢移転が選択されています。公平性の視点から素朴な疑問として、なぜ市有地でなければならないのか。鎌倉、深沢以外、他の地域で土地を買収してでも検討する余地が本当にないのか。今、このことを取り上げて時計の針を戻すことはしませんが、つまり深沢移転の是非は一つの選択をするだけにしかすぎないという公平性の欠如です。そうこうしている間に適地が見つかれば、また住民投票するのでしょうか。提案された住民投票条例に対する効率性に疑問を持たざるを得ません。
 共同性についてです。深沢移転に賛成か反対か、それとも第三の意見か。議論を深め、よりよい行政サービスの提供者たる市役所の実現のための前提が、住民投票を行い、移転の是非が示された結果として既成事実化されることに、大きな懸念を持っております。それがたとえ修正案第12条で、「結果を尊重、あるいは住民投票の総数が投票有資格者の2分の1に達したときは、その結果の重みを十分に考慮しなければならない。」としてもです。共同性を発揮するためには、適切な情報提供、情報公開とともに、議論を深める努力を積み重ねることこそ大切ではないのですか。提案者にそのことを訴えたいと思います。
 津波浸水想定図を示したとか、示さなかったとかが、総務常任委員会で議論されましたが、深沢移転の是非についての議論の素材になっています。よく考えてみてください。現在地が少なくとも津波浸水想定にわずかしかかかっていない事実は、今後、この場所に公共施設を建設するためのよき材料となるのではないでしょうか。市民それぞれが思い描く市役所を一つ厳密に定義することは、今はできないかもしれませんが、少なくとも行政サービスを提供できる公共施設の建設候補地として、津波浸水の影響がないことを共通理解できたことは喜ばしいことではありませんか。
 最後になりますが、市長に苦言を呈しておきたいと思います。
 そもそも、この住民投票の制定を求める請求が起こった原因は、「広報かまくら」5月1日号です。記載事項をよく読めば、市長の言い分も理解できるところですが、市民目線からはその思いが正確に伝わらなかったことは承知せざるを得ません。今後、情報提供、情報公開においては、慎重な対応を望んでおきたいと思います。
 以上で討論を終わります。
 
○7番(武野裕子議員)  ただいま議題となりました、議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例について、日本共産党鎌倉市議会議員団を代表して、修正案及び修正案を除く原案ともに賛成の立場から討論を行います。
 直接請求された市民代表から提出された鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例に対し、当会派の高野議員から修正案を提案し、結果、総務常任委員会において可決となりました。本条例案は地方自治法の規定により必要とされている3,005人分の署名を大きく上回る8,270人分の署名により請求されたものであり、本市における有権者の20人に1人以上が署名されたことになります。この事実は大変重いものであり、そうした市民の意思を最大限に尊重した対応を行うことが、市民代表機関としての市議会に求められるものと考えるものであります。
 一方、本条例案に対して市長から意見が付されました。その中で各条の規定に係る技術面からなされた指摘については条例の精度を高め、実効性あるものにする上で取り入れる必要があると考えられるため、慎重に精査をした上で、文字や文言を含め最低限必要な修正を行ったものであります。さらに、条例制定を根拠とする住民投票における結果の法的拘束力については、市長意見にもあるように、過去の凡例からも、また総務省の見解からも、地方自治法に反する可能性が高いと判断されるため、直接請求された市民の思いを尊重しつつ、違法性を解決して、条例を改善するための修正を行ったものであります。したがって、本条例の修正の前提として、市民の直接請求により提出されたことを十分に踏まえ、市民案の根幹となる条例の精神や、住民投票における判断基準を尊重し、その部分は変更しておりません。あくまで市民案の精神を生かし、実効性ある条例とするため、技術面や違法性のある規定を改善することにより、原局質疑で条例の条文に即した技術的な問題点を明らかにした上で、修正の提案を行い、委員会で可決に至ったものであります。
 意見の中で出された、修正案によって署名された市民の方々の民意を曲げる可能性がある、修正で民意を曲げる懸念がある、といった指摘は、事実経過に反するだけでなく、代表者の陳述内容に照らしても、署名された市民の思いに真っ向から反するものであり、反対ありきの理由づけにほかなりません。修正したことにより、市民の皆さんの思いをより現実的に生かしていく道が開かれたのであり、それができるのは、市民代表機関である市議会だけであります。
 さらに、原案を含む本条例案に対して、情報の共有レベルを高め、市民が一緒になって議論できる環境をつくる上で、判断材料が不足しているとか、情報が未成熟なまま市民に判断させることはいたずらに対立を生み、分断につながるといった主張についてですが、そもそもきちんとした情報を市民に明らかにせず、また市民の対立が生まれかねない状況をつくり出したのは、一体誰でしょうか。それは、市民でもなければ議会でもなく、行政主導で計画を進めてきた市長にほかなりません。鎌倉市において38年ぶりの直接請求、市政初の住民投票条例の請求に至った背景には、行政の進め方と市民の理解や意識との間に、ひどく深く大きな乖離があること以外に、その理由を見出すことはできません。
 総務常任委員会の審査で、神奈川県が平成27年3月に公表した津波浸水想定図を、市が採用していない問題が新たにわかりました。県の浸水想定図によれば、本庁舎は津波浸水エリアに入っていません。素直に県の想定図を尊重すれば、移転の大義が崩れてしまいます。リスク管理と称して県の想定図を採用しない姿勢は、情報隠しと言われても仕方ないではありませんか。したがって、情報が不足しているとか、情報が未成熟であるという議論は時間や時期の問題ではなく、行政の市民に対する姿勢そのものから生じているものだということを、厳しく指摘しなければなりません。本条例案の第9条に規定されているように、むしろ住民投票に向けた準備の中でこそ、これまでの行政の姿勢を変え、包み隠さずありのままの事実に基づく情報提供を促進させる機会となるのではないでしょうか。逆に、住民投票条例を否決し、市長の考え方を結果的に尊重していくことで、一体何が変わるというのでしょうか。結局、これまでの行政のやり方を追認するだけではありませんか。そのどこに8,270人分の署名を尊重する姿勢があるのでしょうか。
 本条例は、修正によって第12条がいわゆる拘束型から尊重型へとその性格が変わりました。住民投票の結果は尊重しつつも、その後、どのような計画にしていくのか、現行の方針どおりとするのか。現在地とするのか。現在地なども生かした分散型とするのかなど、具体的な着地点はむしろ住民投票後に問われていく問題であります。そうした方向性を見出すためにも、現在の時点で市民の民意を投票によって確認することは、今後の鎌倉のまちづくりにとって無駄になることは決してないものと確信するものです。
 意見陳述の冒頭、森本代表の言葉が大変印象に残りました。「本庁舎は深沢に移転しますと書かれた5月1日号の「広報かまくら」が発端でした。いつ決まったのかと驚きました。一度立ちどまって市民の声に耳を傾けてもらいたい。」と、まさにそのとおりではないでしょうか。その声を市長が受けとめず、このまま進められてしまうという危機感から市民が立ち上がり、住民投票条例の直接請求にまで至ったわけです。そうである以上、市長や行政へのチェック機能をより厳しくしていくことと同時に、ここまでに至った少なくない市民の思いを素直に尊重し、本条例案を可決すること以外に市民代表機関としての責任は果たせないということを心から訴え、賛成討論を終わります。
 
○12番(久坂くにえ議員)  ただいま議題となりました、議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例、また修正案に対して反対の立場から鎌倉のヴィジョンをつくる会を代表し、討論に参加します。
 本条例は、8,270人分の連署をもって請求された条例であり、私ども会派議員は本条例制定請求代表者の皆様、そして署名をされた皆様の真剣に市政と向き合ってくださったその姿勢に、改めて敬意を表するとともに、皆様のような方々がいらっしゃるこの鎌倉という地において議員として活動することに、改めて誇りを感じております。
 一方、今回の条例については、市長意見でも示されたように、例えば市役所本庁舎移転については深沢地域整備事業用地以外への他地域への移転をも否定する内容となるのか。成立要件の投票率については、先般の市長選挙のマニフェストによって争点とされたという解釈であれば、前回の市長選挙の投票率並みを成立要件にすべきでないのか。それとも過半数なのか。または、条例制定請求代表者の方が述べていたように、30%が妥当なのか。また、住民投票の適正な執行を確保するために付されるべきとされた資料は何を指すのかなど、整理すべき課題を多く内包していたと考えます。
 私どもは、条例提出者の方々へはその意見陳述のみならず、参考人としてお呼びし、今、申し上げたような疑問、課題を払拭し、実現可能性の高い修正点を考慮したいとも考えておりました。しかし、私どもが提案した本会議における参考人招致は地方自治法上、認められていたにもかかわらず、会議規則に定めがないとされ、また責任を持って運営するとされた総務常任委員会でも、議会日程や意見陳述もあり、議員個々人で市民意見は踏まえており、参考人招致は不必要といった意見が大勢を占め、一部委員から参考人招致が提案されたにもかかわらず、結局、招致は実現しなかったのであります。
 今回の住民投票条例における審査では、参考人招致並びに参考人への質疑により本条例案に対する疑問、課題など、考慮すべき点を明らかにし、提出されようとしている修正案が、果たして署名をした全ての市民の皆様の意向に沿ったものなのか、直接請求という重みを考えれば、当然確認すべきだったのではないでしょうか。こうした場が、修正案を提出されるに当たり欠落していたことは、大変遺憾でございます。
 さて、行政の皆さんに申し上げます。今回の市長意見で私どもが驚愕したのが、住民投票条例により単に深沢地域への移転を賛成か反対を問うことは、これまで多くの方々と丁寧に議論して築き上げてきた結果と過程をないがしろにするものであり、到底容認できるものではない、という表現でございます。確かに市民対話、整備委員会などで議論を重ねてきたことは承知をしておりますが、議会が常々指摘をしておりましたとおり、やはり今回の本庁舎移転については、市民の方々への十分な周知が不足していたことが、今回の直接請求で改めて明らかになったと言わざるを得ません。今回の市民意見を到底容認できないと突っ張るのではなく、どうしてこのような声が上がったのかを真摯に受けとめ、そしてなぜ市役所本庁舎の移転が必要なのか、その必要性を、市民の方に改めて説明する必要があると考えております。それには防災の視点、予算の視点、今後の行政施設のあり方、深沢・鎌倉・大船の3拠点を整備する中で、鎌倉のまちづくりをどうデザインしていくのか、それによる効果、影響は何なのか、あらゆる点から市民の方々に納得いただける説明をお願いしたいと思います。
 現在のように、市民や地域を分断しようとしているこの産みの苦しみを経て、その先に何があるのか、どういった町を鎌倉は目指すのか、具体的に道筋を示す基本構想などを早急に策定してください。説得力のある基本構想などを策定し、なお市民の方々がそれでもやはり、その可否を問いたいということであれば、住民投票は実施すべきと私たちも考えております。そういった意味で、私どもは住民投票条例を現在実施することは時期尚早であり、また、修正案の提案についてはその可否を十分議論すべき場が欠落していたと判断し、反対するものであります。
 冒頭申し上げたように、本条例にかかわった全ての方々に敬意を持ち、その期待を裏切ることのないよう、今後も私どもは真摯にこの課題を注視していくことをお誓い申し上げ、討論を終わります。
 
○22番(伊藤倫邦議員)  ただいま議題となりました、議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定についての修正案に反対、修正部分を除く原案に反対の立場から、自民党鎌倉市議会議員団を代表して討論に参加いたします。
 本議案は、8,270人の市民の署名を伴った、大変重みのある直接請求です。ゆえに、条例制定請求代表者が修正を容認し、署名した8,270人も異論はないと断ずることはできないものであり、よって修正案に反対いたします。
 修正部分を除く原案については、投票結果の効力は市長及び市議会は住民投票の結果に拘束されなければならないと規定してあり、特別多数議決により議事を決する市議会の権限を無にするものであり、本規定は法令に違反する疑いが極めて高いので、反対いたします。
 以上で討論を終わります。
 
○8番(西岡幸子議員)  ただいま議題となりました、議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について及び修正案につきまして、公明党鎌倉市議会議員団を代表して、討論に参加いたします。
 本条例案の原案は、地方自治法第74条第1項の規定により、8,270名の連署をもって、本庁舎の深沢移転に係る住民投票を行う条例の制定の請求がなされたものです。市は、市役所本庁舎の深沢地域整備事業用地内の行政施設用地への移転の方針を進めようとしている背景と方針決定については、一定の手順を踏んだとしていますが、それが多くの市民の知るところとなっていなかったことは、平成30年5月1日号の「広報かまくら」の記事に対する反発の大きさを見れば明らかであり、市民への周知不足と議会への説明不足と言わざるを得ません。
 今回の直接請求で、わずかの期間で8,270人もの署名が集まったことは、問題意識を持った市民の労苦のたまものであり、その運動によって市役所本庁舎移転方針について多くの市民が知ることとなったという功績は、市の周知不足と比較しても高く評価するものです。しかし、条例案にいう市役所本庁舎移転整備計画が存在していない現段階で、住民投票によって深沢移転の是非を問うことは、市役所移転が必要となる背景や具体的な市役所機能のあり方を確認する前に、単純な地域の選択を求めることになりかねません。これは、いわゆる好き嫌いの感覚での選択になるおそれがあり、その結果がどのようなものであれ、地域の対立や感情的なしこりを残すことにもなりかねません。
 現在、市が策定作業を進めている市役所本庁舎移転についての基本構想案もしくは素案が提示されれば、本庁舎移転の是非について市役所のあり方や考え方、新庁舎に整備しようとする機能と現庁舎での機能性の比較、新庁舎の機能的構造、交通体系から見た利便性の比較、大規模災害発生時における災害対策本部機能のあり方や受援力の比較、将来にわたる社会構造の変化への対応力など、具体的な視点で比較検討でき、十分な情報が提示された上での住民投票なら市民判断もより精度の高いものになりますし、さらには予算規模や資金調達のあり方、将来に過度の負担を残さない整備手法の是非、他の行政計画との兼ね合いなど、資金面や政策面からの比較も可能になります。
 このことは条例案第9条において市長は住民投票の適正な執行を確保するため、本庁舎整備計画、その他必要な情報、資料を第2条各項の選択肢に沿い、市民へ公平かつ公正に提供するよう努めるものとする、とあるとおりであり、同第2条2項において、情報の提供に際して、中立性の保持に留意するものとすると規定されていることが実現できればいいのですが、肝心の市役所本庁舎移転整備計画は存在せず、基本構想案も現時点で提示されておりません。本来は、11月中に基本構想の素案が提示されるべきところですが、策定作業の見通しが必要ということで、いまだに提示されておりません。移転の方針を表明した市の作業のおくれは、厳しく指摘すべきですが、市民が判断すべき情報、資料がそろっていない段階での住民投票の実施は、問題があると考えます。
 仮に、本臨時会でこの条例案が成立した場合、3日以内に市長に送付され、市長は20日以内に公布・施行することになります。条例案の第4条では、施行の日から70日以内に住民投票を実施することとしており、基本構想案の提示やそれに対するパブリックコメントが住民投票実施までには行われない可能性がかなりの確率であります。現状のままで住民に判断を問うことは、議会において法的可否を修正したとしても、判断材料や環境が整えられていない状況であることから、住民投票は基本構想案もしくは素案が提示され、それに対して行われる、パブリックコメントに対する市の回答が提示されてから実施すべきです。
 この条例案原案に対しては、過日行われた総務常任委員会において修正案が提出され、採決の結果は可否同数となり、委員長裁決で修正可決されました。多くの市民が原案の内容に共鳴して連署した条例案を、修正権があるとして議会において修正することは、字句の修正など、条例の本旨を変えない軽微な修正であり得ることですが、例えば第12条のように、住民投票の結果について市長や市議会が拘束される規定を尊重規定としたり、住民投票の総数が投票有資格者の総数の2分の1に達したときにその重みを十分に考慮しなければならないとするなどの、投票結果の効力についての大幅な変更を行うことは、連署した市民の意思に沿うものであるか、判断しがたいものになります。この場合は、原案とは別の形で新たに議員提案されるべきであると考えます。
 今回の直接請求に至った背景は、本庁舎移転に関する市の方針の周知不足や、「広報かまくら」5月1日号の断定的な表現が、市民に大きな疑問を抱かせたことにあります。市や市長はこのことを大いに反省し、将来を見据えた市役所のあり方について、市民にわかりやすく提示し、意見を募るよう努力すべきです。その是非についての市民の判断は、それからなされるべきであると考えることから、本条例原案及び修正案には反対であることを表明し、討論を終わります。
 
○6番(長嶋竜弘議員)  ただいま議題となりました、議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について、修正案に賛成、修正案を除く原案に賛成の立場で討論に参加いたします。
 「災害に強いまちを目指して、本庁舎は深沢地域整備事業用地に移転します」5月1日号の「広報かまくら」で本庁舎移転が決まったかのごとく掲載したことが、今回の住民投票の運動が起こるきっかけとなった。市長は、3期目の選挙後のタウンニュースのインタビューで、白紙委任とは考えていない。それぞれの課題で説明を尽くしていく、と答えているが、5月1日号の「広報かまくら」に対する異論が噴出したことについて、本庁舎移転については選挙で負託を得ているので問題ないという態度を示しており、その態度が多くの住民の反発を買うこととなり、住民投票の運動が加速して大きなうねりとなった。
 松尾市長の得票は4万6666票。当日有権者数14万8309人。支持率は31.46%であります。これで選挙で全ての公約の信任を得たと言えるでしょうか。本庁舎移転の公約も、選挙公報には片隅に小さく書いてあるだけであった。また、市長は東洋経済オンラインの年頭インタビューで、「移転先については公有地活用検討委員会における公有地活用方針素案に、深沢への移転を盛り込んでいる。ただし、市庁舎の移転は議会における議決事項であり、最短でも7年先となる。」と答えている。おっしゃるとおり、市庁舎移転は議会の議決事項でありますが、地方自治法第138条の2にはこう記載されています。「普通地方公共団体の執行機関は、当該普通地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令、規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う。」、つまり、議会の議決に基づかないと事務は執行できないということであり、市長がインタビューでおっしゃったとおりでありますが、行政として決定したと言って、議会の議決を経ず、市民合意も得ず、異論が噴出している中、強引に進めている状況である。
 本庁舎移転に関しての議会での議決の主なものは、まずは事前に深沢地域整備事業用地の都市計画決定を行う必要があります。その後、位置を定める地方自治法第4条とそれぞれの関連予算がありますが、地方自治法第4条には「1、地方公共団体は、その事務所の位置を定め又はこれを変更しようとするときは、条例でこれを定めなければならない。」「3、第一項の条例を制定し又は改廃しようとするときは、当該地方公共団体の議会において出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない。」と記載されておりますので、この特別多数議決で出席議員の3分の2以上の同意を得てから行政として決定が言えるのであり、災害に強い町を目指して本庁舎を深沢地域整備事業用地に移転しますと広報できるわけでありますので、現在の状況下はこういった方針で考えておりますといった発信にすれば、今回のような運動は起こらなかったと思われ、完全に松尾市長の勇み足だったと考えます。
 今回の臨時会でも、市役所の本庁舎深沢地域整備事業用地移転は正式に決定したのかという私の質問に、松尾市長は「地方自治法という中での市役所の位置を定める条例、この点について正式に決定していくのはこれからということになります。」と答弁しております。また、本庁舎の位置を決める3分の2の特別多数議決の条例はいつ出すのかとの私の質問に、松尾市長は「市役所の位置を定める条例は、行政実例として建築の財源の見通しが立たない時期に制定することは適当ではない。本庁舎建設に必要な予算概要が明らかになった以降に提案をするというのが適当である。」と答弁しております。つまり、この答弁から深沢移転は正式には決定しておらず、財源の見通しも立っていないのに本庁舎を深沢地域整備事業用地に移転しますと5月1日号の「広報かまくら」に掲載して、市民をだましていたことがわかります。
 最近、振り込め詐欺の被害が鎌倉でも増加しているそうでありますが、詐欺というのは辞書を引くと、他人をだまして錯誤に陥れる行為をいう。他人をだますというのは、真実ではないことを真実であるとして伝える場合のほかに、真実をあえて隠す場合も含むと記載されていますが、まさに鎌倉市役所がやっている行為そのものであります。
 市民や議会での指摘を真摯に受けとめて、市長が御自分でおっしゃったとおりに、それぞれの課題で説明を尽くしていく。また、議会で防災面での懸念事項の指摘があったので、立ちどまってよく検証して考え直す姿勢があれば結構ですが、その姿勢は全く感じられず、それどころか今回、条例制定請求代表者から提出された条例案に付した意見書を見ても、また市民対話の席で異論を唱えた12名の市民を排除したことも、市役所建てかえの資金を出すオーナーである納税者に対して、まるでけんかを売っているような態度である。このような事態は、何か強い力による深沢バイアスがかかっているように見えます。また、強引に進めている松尾市長のやり方に、市長リコールの声が日増しに高くなっているところでありますが、この状況は、住民投票により、市民の皆さんによる判断をしていただくことが必要だと私は考えております。
 ここで、深沢地域整備事業用地への本庁舎移転の問題点を挙げておきます。
 1、まず、地方自治法第4条に抵触する可能性があるという問題であります。「住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係等について適当な考慮を払わなければならない。」との地方自治法第4条の内容に、深沢移転は反する計画であります。4月に行われた議会全員協議会の答弁でもあったとおり、深沢予定地は最も便利な場所ではなく、他の官公庁との関係は悪くなります。また、他の官公庁との協議、調整は、行政として決定したのに、やっていないお粗末さです。
 9年前の市長選挙のとき、出陣式の後の第一声は、鎌倉駅西口、そう、御成町でありました。そして、マイク納めは大船駅前でした。松尾市長は鎌倉の中心で住民の利用に最も便利な場所で交通の事情がよいところがどこであるか、御自身の選挙でそのとき証明していたのではないでしょうか。
 2、次に、道路及び新駅設置を中心とした交通網の整備であります。深沢近隣の道路の拡幅、県道の道路の拡幅は絶対条件であるが、無計画である。新駅設置は不明であるとともに、仮に設置した場合、柏尾川を渡る橋の設置に数十億円かかるとの答弁があったほか、橋の向こうの藤沢市側の駅に向かう道路の藤沢市民の立ち退きはどうするのか、全く先行き不透明である。職員の通勤、来庁者の交通の確保はどうするおつもりなのか。また近隣の渋滞などの対策はどうするおつもりなのか。全く答えがない状況です。
 3、次に、財政的問題です。新駅設置周辺道路の整備、整地、軟弱な地盤の対策、洪水浸水対策など、一体どのくらい費用がかかるのか、基礎地盤へのくい打ちは30メートル弱、建設コストは大きくかさむことは確実です。深沢地域整備事業用地全体の財政面のめどが全く見えない上に、資金計画が全くなされていない状態であります。市長は住民投票の会の集まりで資金計画は40年と答えましたが、金融のプロの市民からそんな話はあり得ないと指摘されておりました。
 4、次に、特定都市河川浸水被害対策法の問題です。柏尾川は、特定都市河川浸水被害対策法に基づき、特定都市河川に指定されており、深沢地区から大船地区にかけて広範囲で指定区域になっています。この法律に準拠して開発行為を行っていくには、相当ハードルが高く、神奈川県を初め近隣自治体との協力関係が重要であるが、いまだに流域水害対策計画も未策定である。指定区域は関谷、今泉台、梶原、鎌倉山、極楽寺まで範囲に入っており、この対応は相当難儀であることは間違いない事実である。
 5、次に、柏尾川の浸水被害対策です。境川水系洪水浸水想定区域図を見ると、柏尾川は想定最大規模632ミリ降雨時に深沢地域整備事業用地全体が浸水する想定であるが、それを隠していたことは大問題であるとともに対策が盛り土による造成しか考えておらず、話にならない。さらに柏尾川沿いの地域は、家屋倒壊等氾濫想定区域に指定されており、水の力による特に堤防沿いの地盤が削られてしまう河岸侵食が発生する懸念があります。
 6、次に、軟弱な地盤の問題です。歴史的背景、過去行ったボーリングデータの結果を見ても、この地は軟弱な地盤であることは否定できず、周辺道路も含めた液状化、近隣の洪水浸水などが懸念されます。国土交通省の「水害対策を考える」のページには、土地の歴史や特徴を現在に伝えるメッセージが地名に残されている場合がある。「深」の文字が含まれれば、周辺より土地が低い可能性があり、「沢」の文字では水のたまりやすい土地の可能性もあると記載されていますが、昔、この地は海だったわけであり、深沢にあった湖に住んでいたといわれる竜で鎌倉と江の島に伝わる五頭龍と弁財天の伝説に登場する五頭龍はまさに暴れ川だった柏尾川のことをあらわしたものであることに疑いの余地はありません。歴史や伝説を軽んずるなかれ。東日本大震災で我々が学んだことを忘れては決していけないと思います。また、ボーリング調査の結果では、深沢地域整備事業用地内に液状化の判定が出ていることも考慮しなければならないと考えます。液状化については、鎌倉市が出している情報と、神奈川県が現在公表している情報にもそごがあり、ここでも都合のよい情報操作が行われていることもつけ加えておく。
 7、次に、規模の問題です。現在の本庁舎の2.5倍ものスペースがなぜ必要なのか。市長はテレワークを導入していくと言っておられますが、それだったら全くの根拠矛盾ではないでしょうか。また、人口減少、少子高齢化の中で、AI、ICTの進化、決済、各種手続の簡略化が進むことを踏まえると、本庁舎の規模はむしろ縮小していくことは、誰が見ても明らかである。公務員の仕事自体が大きな変化を迎えることを全く考慮していない状況です。
 8、次に、経済問題です。経済的問題については、余り語られておりませんが、総務常任委員会で視察に伺った四万十市では、本庁舎が町の中心部から郊外へ移転することによって町が寂れるとの理由で商工会議所、商店街、振興組合連合会が反対の意思を表明していたとのことでした。あくまで想定でありますが、役所の経済効果を試算してみました。職員、来庁者、関係者で1日2,000人とします。お金の支出は通勤、昼夜の飲食、買い物等であります。1人1,000円の消費と仮定します。1日これで200万円の消費になります。250日開庁で年間5億円消費となります。この消費のほか、新しく深沢に町が形成されてお店ができると、市内の消費は大型ショッピングセンター、新駅周辺の商業施設、新しくできる大手資本に吸い取られ、地元商店街にはお金は落ちなくなります。ショッピングセンターは出店の事業者がわからないので何とも言えませんが、規模からいって150から200億円の売り上げが見込まれます。さらに、ロードプライシングを実施したら、旧鎌倉地区の経済は確実に影響を受けます。また、3,000人が居住するマンションができたらどうなるか、深沢地域の空き家がふえることは確実です。私が、横須賀の平成町の埋立地で新規の売り上げ100億円規模のお店を手がけたとき、近隣のマンション群はなかなか埋まらなかったのですが、真っ先に入ったのは横須賀市内の横の移動の人たちで、半分程度の入居者は市内移動だったそうです。不便な立地の自宅の戸建てが売れるうちに売って、便利なマンションに住みかえる、高齢化の時代の定番です。現状でも空き家は全戸の1割程度の7,000戸あります。空き家対策、どうするのでしょうか。これがSDGs未来都市の持続可能な経済でしょうか。全く違うと思います。
 9、最大の問題は、現本庁舎は津波が浸水しないことを隠していたことです。先日の総務常任委員会でも議論しましたが、平成27年3月に発表された神奈川県津波浸水想定では、現在の本庁舎は浸水しないことがわかり、今まで現在の本庁舎は津波が50センチ浸水するので、電気設備がだめになり機能しなくなると言って、深沢移転の最大の理由としていたことは、市民や議会をだましていたということになります。平成29年3月に出された鎌倉市本庁舎整備方針、本庁舎の課題には、現在の本庁舎敷地の大半は、神奈川県想定明応地震による浸水予測(最大クラスの津波)において、0.5メートル未満(一部0.5から1.2メートル)の浸水が想定される区域となっており、庁舎1階部分及び地下への浸水が想定されます。なお、受変電設備及び各庁内への配電設備が地下にあるため、津波によって電気室が水没した場合は送電が不可能となり、ライフラインが停止する事態に陥りますと記載されています。しかし、10月24日に開催された本庁舎等整備委員会の資料3には、神奈川県津波浸水想定図によると、現在における津波による浸水の想定は敷地南東側に立地する第3分庁舎付近で、0.01メートル以上0.3メートル未満、0.3メートル以上1.0メートル未満及び1.0メートル以上2.0メートル未満が混在していますとの記述が突然出てきます。津波の浸水が本庁舎移転の最大の理由としていたにもかかわらず、この新たな神奈川県のデータを3年半隠して、市民と議会をだましていたことは到底容認できる話ではありません。また、ここに記載の浸水が想定されている敷地の南東側に立地する第3分庁舎付近とは、工事が一時中止になっているおなり子どもの家の場所が含まれていることも見逃してはならない事実であります。
 深沢地域整備事業用地への本庁舎の移転の問題は、まだまだありますが、これら事実がわかった以上、一旦立ちどまって再検討する必要性があり、再三、その意思について市長に確認しましたが、その意思はないとのことだったので、これらのことを明らかにした上で住民の皆様に住民投票で御判断いただく必要があると考えます。
 次に、深沢移転に賛成か反対かの二択では、市民の明確な意思を確認することは困難との意見を市長が言われているので、私が考える対案を挙げておきます。三つあります。
 1、延命化。Is値のことが議題になっていますが、免震補強という手法も検討するべきだと思います。現庁舎を使用するのでしたら、どのみち必要なことだと思います。今どきの技術でしたら十分可能ではないかと、素人ながら考えます。事例として、新宿駅、上野、小田急百貨店は1966年の建物でありますが、営業しながら11カ月の工事で免震補強をしております。180億円で50年使う庁舎を建てる場合、年割コストは3.6億円です。36億円かけて免震補強及び延命工事を行って10年使えばコストは見合うはずです。
 2、現地建てかえ。現地建てかえは実質無理のような理由づけがなされていますが、本当でしょうか。現市庁舎の1万2560平米で手狭といっていますが、これがだましです。現庁舎は廊下ばかり長く、何の意味もない無駄なスペースの中庭があったり、今どきないほど広い議場、無駄な駐車場の誘導路、別々にある議会棟の駐車場など、スペース効率の非常によくないつくりとなっています。執務スペースと附帯設備のスペースがどういった比率になっているのか、公的不動産活用課に聞いてもデータはなく、検証をしてすらいないのです。無駄なスペースをなくせば相当広い空間が生まれるとも思います。また、建てかえ時にどこか別の場所にプレハブを建てるなどして、仮設庁舎で執務をとらないといけないからお金がかかると言っていますが、これもだましです。まず駐車場を立体で建てる。例えば、議会棟の駐車場から駐輪場のところに建てれば2階建てプラス屋上で今の台数は確保できるはずです。そして、現在の駐車場のところに庁舎を建てかえる。そうすれば、仮庁舎に引っ越す必要性はなくなりますし、新庁舎への引っ越しは深沢移転より楽ですし、経費も少なくて済むはずです。人口減少、高齢化の将来を見越せば、本庁舎を現在の2.5倍もの建物を建設する必要性はなく、抑えぎみで外に賃貸で借りて、必要がなくなったら退去するといった方法論をとるほうが有益だと考えます。また、現在、国でも推奨しているように鎌倉の景観に合った木造を中心としたハイブリッドの建築にすることが望ましいとも考えております。また、地下に眠るとされる遺構については、それを見せる本庁舎でもよいのではないか、その議論は市民の皆様とともに本来あるべきやり方の対話を行って決めていくべきだと考えております。
 3は、分散化です。これは二つ提案があります。まず大船と二拠点化が挙げられます。現在の場所を本庁舎、大船近隣に技術部門を中心とした庁舎の設置を行います。場所としては大船駅横の開発にあわせて行う現在の大船支所を多層階に建て直す。空き物件が出た場合、検討するなどがあると思います。大船支所、玉縄支所、ルミネ窓口の集約化が図れるとともに、それらの場所を別に利用できるメリットが生まれます。また、来庁される多くの利用者の方々にとっては、東京・横浜から近くなるので利便性の向上が期待できると考えます。
 二つ目は、小規模サービスセンター化です。これは、流通業的な見方をすると、コンビニ型行政サービスといえばわかりやすいと思います。週末買い物型の郊外に建設するショッピングセンターではなく、日々の生活に密着した必要最低限のコンビニスタイルのサービスの提供です。賃貸を基本として大手コンビニチェーンやスーパーとコラボするのがよいと考えます。例えば、家賃及び電気代含めて月額200万円と仮定します。そうすると年間2400万円、15カ所設置したとすると、先ほど出しました年割コスト3.6億円になります。現在の5地区に3カ所サービスセンターの設置ができることになります。本庁舎は現在の場所に残すことになりますが、小規模で済み、他の施設、例えば図書館などを入れ込むことができると考えます。また、深沢地域整備事業用地は、総合治水対策として境川遊水地公園のようなグラウンドを中心とした設備を整備することを中心に考えるのがよいと考えます。また、大型のパークアンドライドの駐車場、新焼却施設とその熱源を利用した施設等を検討すべきだと考えます。西側権利者の方々には、柏尾川の浸水がないゾーンへの移転を視野に入れて協議をしていく必要性があるとも考えております。
 深沢バイアスにより都合の悪い情報にふたをして誘導して、市長以下行政ぐるみで市民をだましていることは、大変大きな罪だと考えます。たび重なる不祥事によって、信頼関係を失って市民の皆様との大きな溝ができましたが、松尾市長初め幹部職員が中心になりその溝をさらに深めることをやっているわけです。この深まった溝は、皆さんの後輩の職員が引き継ぐことになり、今後の市政運営は長きにわたり市役所への不信感は拭えず、苦労の連続となることで
しょう。
 9年前、最初の松尾市長の市長選挙のことを思い出しておりました。出陣式を終えて、第一声を上げるために鎌倉駅西口に自転車で向かい、御成通りに入っていったときのことを松尾市長は覚えていらっしゃいますでしょうか。市民の皆さんが次から次へと通りに出てきて、握手攻め。そこらじゅうのベランダから手を振って応援していたその歓喜の声はすさまじいものがありました。私も松尾市長も選挙が始まってわずか2時間程度で勝利を確信した瞬間でした。その声は、今では罵声へと変わっています。そのときの市民派市長が今では利権派市長へ、今回のことであなたの鎌倉での政治生命は終えんを迎えることになるでしょう。
 最後に、松尾市長に以下の言葉を贈ります。
 一つ、経世立志のこと。周りを変えたいなら自分を変えよ。自分を変えたいなら意識を変えよ。意識を変えたいなら確固たる志を立てよ。今、我々は、文明維新と日本改新を担うべく、その先頭に雄々しく立ったのである。一つ、熱意発憤のこと。熱い人間となれ。冷たければ何も成すことなく終わってしまう。そして、世の不条理に怒れ。現状に満足するな。天下に対するふんまんこそ、立志の源泉となるのである。一つ、滅私大欲のこと。私利私欲を捨てよ。特に金銭には廉潔であれ。名利にとらわれたら俗物に落ち、志士にはなれず改革もできない。地位や名誉は結果として天から与えられるものに過ぎない。我々は超然として、国家国民を救う大欲に生きよう。一つ、大局大器のこと。こせこせ小さくまとまるな。大宇宙を呼吸し、もっともっと大きく生きよ。世界を、日本を、我が事と思って心配しよう。歴史を学んで先人の無念を受け継ぎ、子孫には勇気と誇りを与える生きざまを残そうではないか。
 以上で、議案第52号についての討論を終わります。
 
○10番(飯野眞毅議員)  ただいま議題となりました、議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について、原案及び修正案について反対の立場で討論に参加します。
 今回、8,000人以上の市民の方々から住民投票条例制定請求が提出されたことは、行政側の意思決定プロセスが、少なくとも8,000人余の市民の方々の認識と、大きく乖離していたことに起因していると認識しております。市庁舎の移転は、市の行政計画の中でも極めて重要な事業であり、多くの市民がその意思決定プロセスに何らかの形で参画、あるいは検討の進捗を十分に認識した上で進めるべきでありました。行政の進め方に問題があったのか、住民の関心が薄かったのか、我々議員の調整力が不足していたのか、それについて議論する以前に、実態として8,000人以上の市民の方々から、現在の進め方に疑問を投げかけられたことは紛れもない事実であり、それをしっかり受けとめ、今の状況下で何をすべきか、今後、どのように行政側が対応すべきか、最良の方法を市民、行政とともに考えていかなければなりません。
 今回の署名活動、条例制定の請求については、市民の方々の意思として、重く受けとめなければなりません。その上で、今回の本庁舎移転計画に疑問符を投げかけられた条例案を検証すると、深沢に移転か否かのみを今後市民に問うて投票するものであることが、この条例案制定の賛否を議論する上で、重要なポイントであると認識しております。この条例案を提出した市民の方々が言われるように、十分な市民の合意、計画についての認識がなされていない状況下では、仮にこの条例を可決し、速やかに住民投票を実施したとしても、前述したとおり、重要な事業である市役所移転について、多くの市民がその意思決定プロセスに何らかの形で参画あるいは検討の進捗を十分認識した上で、進めることができません。むしろ、多くの市民が基本構想、基本計画も定まっていない、未成熟な情報共有段階のまま移転の是非を問うことは、市民をいたずらに分断し、将来の鎌倉市政、市民活動に禍根を残すものと考えます。その予兆として、既に地域ごとで賛否の意見が対立し、本庁舎のあるべき姿の議論を置き去りにして、単なる地域ごとの対立に基づく発言が散見されています。
 本庁舎の移転は、繰り返しになりますが、重要な事業であります。ただ、市の重要な施策、事業はそれだけではありません。防災、福祉、子育て、教育など、多岐にわたる行政課題、そして喫緊に解決が求められるごみ処理問題など、これらさまざまな分野の行政課題の解決には、さまざまな担い手を含めた市民の協力が欠かせません。果たして、この条例を制定し、住民投票を行った場合、その結果のいかんにかかわらず、市民が分断される状態となってしまっては、これら行政課題を解決していくための取り組みに、多大なる悪影響を与えることが憂慮されます。
 これらの状況を考慮すると、今、本市にとって何をなすべきか、最良の判断は何か。それは市庁舎移転に係る市民との情報共有レベルを高めることであり、この条例案を可決し、情報共有レベルが希薄な段階の今、住民投票の実施に向けた議論をすることではないと考えます。いかなる施策、事業も、全ての市民の総意で進めることはできません。しかしながら、一人でも多くの市民がその議論に参画し、またその議論を認識する環境を考える必要があります。幸い、今回の条例制定への請求によって、多くの市民は問題意識を持っていただけたと思われます。市役所本庁舎が、次世代の子や孫たちのためにどのようにあるべきなのか、防災、安全性、交通問題など、前提条件に限らず、技術革新の進捗を前提とした必要な機能、仕様、たたずまいも含めた、市民が集い、にぎわい、活動する場として求められるものとは何かを議論する必要があります。本庁舎の移転先が深沢か否かを問うのではなく、市民皆で議論するプロセスを経るため、今は軽々に住民投票を行うべきではないと考えます。
 以上の理由により修正案及び修正部分を除く原案について反対とさせていただきます。以上で討論を終了いたします。
 
○2番(くりはらえりこ議員)  ただいま議題となりました、議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について、修正案に賛成、修正案を除く原案に賛成の立場から討論に参加いたします。
 当該議案は、地方自治法第74条第1項の規定に基づき、条例制定請求代表者の6名から有権者の50分の1以上の連署による個別設置型の鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例制定の直接請求が市長に対して行われたことによるものであります。条例制定請求代表者から提出された条例案及び請求の要旨、6人の意見陳述により理も情も伝わってまいりました。8,270名の有権者の連署の重みは言うまでもなく、皆様に敬意を表します。その背景にはさらに有権者だけではなく、声なき声もあるだろうと想像しますと、大変重いことと受けとめております。
 市長から地方自治法第74条第3項の規定に基づき意見が付され、総務常任委員会でも質疑させていただき、鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について直接請求がされたことに対して、行政の長として説明不足に対する反省の弁をいただきました。議会に対して本庁舎移転の説明を、4月4日の全員協議会で行っていただきましたが、その際に聞きおくという声が多数上がっていたにもかかわらず、5月1日には、一面に「本庁舎は災害に強いまちを目指して深沢地域整備事業用地に移転します」という大見出しの「広報かまくら」が全戸に配布され、一議員として市民の皆様への説明に終始する状況がありました。二面まで読み進めますと、「事業のスケジュールイメージ(確定したものではありません。)」ということも記載されていますが、市民の皆様の目にどう映るのか、わかりやすく誤解のないように説明を尽くす必要があると考えます。
 市長の意見書の中にもあるように議会制民主主義の中、地方自治法第4条の第1項から第3項では、地方公共団体の事務所の設定または変更には、出席議員の3分の2以上の者の同意がなければいけません。今回、市庁舎移転の決定のプロセスの中で大きく欠落してしまっている部分があることに行政がお気づきでないはずはありません。市民の民意を無視することは、民主主義の根幹にかかわることであり、行政の継続性も危ぶまれる事態でございます。また、新たな市庁舎の候補地として現市庁舎と移転候補地の比較の際に用いた津波浸水想定や外水・内水の浸水想定のデータが古いものであったり、最大の想定でないものがある中で検討されたことなどは、再検討すべきと考えます。
 本市において、鎌倉市庁舎本庁舎が日本国内、そして世界に誇る鎌倉の本庁舎という位置づけもありますが、決して忘れてならないのは鎌倉市民の心の支えとして機能することも、忘れてはならないと考えます。住民投票に関してメリット・デメリットがあることも承知した上で、どの時期に行うのが妥当かという議論もあろうかと思いますが、そもそも建築物を建てる際は、土地選びがあった上での基本構想の検討、基本計画、設計、工事というプロセスだと考えますと、市民にとって無駄な経費をかけないことを考え、今の時期に行う以外の選択肢はなかっただろうと考えます。そして、今まで全市民の声を聞いたことがなかったこと、議会制民主制の補完として直接請求がなされたこと、説明不足であることを考えますと、住民投票によって全市民に市政に興味を持っていただき、行政も議員も考え、説明を尽くす機会を持つことは、鎌倉市政にとって財産となる可能性にかけたいと考え、今回、賛成したいと存じます。市民の声を聞かせていただきたい。
 以上、賛成討論とさせていただきます。
 
○議長(中村聡一郎議員)  質疑及び討論を打ち切ります。
 これより採決に入ります。
 議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定についてを採決いたします。
 本件に対する委員長報告は修正でありますので、まず委員会の修正案について採決いたします。委員会の修正案に御賛成の方の挙手を求めます。
                   (少 数 挙 手)
 少数の挙手によりまして、委員会の修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。原案のとおり決することに御賛成の方の挙手を求めます。
                   (少 数 挙 手)
 少数の挙手によりまして、議案第52号は原案否決されました。
 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 平成30年11月鎌倉市議会臨時会はこれをもって閉会いたします。
                   (15時43分  閉会)

 平成30年11月27日(火曜日)

                          鎌倉市議会議長    中 村 聡一郎

                          会議録署名議員    大 石 和 久

                          同          松 中 健 治

                          同          千     一