平成30年11月臨時会
第1号11月20日
○議事日程  
平成30年11月臨時会

 鎌倉市議会11月臨時会会議録(1)

                                      平成30年11月20日(火曜日)
〇出席議員 26名
 1番  千   一   議員
 2番  くりはらえりこ 議員
 3番  竹 田 ゆかり 議員
 4番  中 村 聡一郎 議員
 5番  志 田 一 宏 議員
 6番  長 嶋 竜 弘 議員
 7番  武 野 裕 子 議員
 8番  西 岡 幸 子 議員
 9番  日 向 慎 吾 議員
 10番  飯 野 眞 毅 議員
 11番  池 田   実 議員
 12番  久 坂 くにえ 議員
 13番  森   功 一 議員
 14番  安 立 奈 穂 議員
 15番  高 野 洋 一 議員
 16番  納 所 輝 次 議員
 17番  永 田 磨梨奈 議員
 18番  高 橋 浩 司 議員
 19番  山 田 直 人 議員
 20番  前 川 綾 子 議員
 21番  河 村 琢 磨 議員
 22番  伊 藤 倫 邦 議員
 23番  保 坂 令 子 議員
 24番  吉 岡 和 江 議員
 25番  大 石 和 久 議員
 26番  松 中 健 治 議員
     ───────────────────────────────────────
〇欠席議員 なし
     ───────────────────────────────────────
〇議会事務局出席者
 事務局長        大 隅 啓 一
 次長兼議事調査課長   木 村 雅 行
 議事調査課課長補佐   笛 田 貴 良
 議事調査担当担当係長  窪 田 敬 司
 書記          片 桐 雅 美
 書記          鈴 木 麻裕子
     ───────────────────────────────────────
〇理事者側説明者
 番外 1 番  松 尾   崇  市長
 番外 7 番  齋 藤 和 徳  行政経営部長
     ───────────────────────────────────────
〇議事日程
               鎌倉市議会11月臨時会議事日程(1)

                               平成30年11月20日  午前9時30分開議

 1 諸般の報告
 2 会期について
 3 報告第16号 交通事故による市の義務に属する損害賠償の額の決定に係る ┐
         専決処分の報告について                 │市 長 提 出
   報告第17号 交通事故による市の義務に属する損害賠償の額の決定に係る │
         専決処分の報告について                 ┘
 4 議案第52号 鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について    同     上
     ───────────────────────────────────────
〇本日の会議に付した事件
 議事日程に同じ
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                鎌倉市議会11月臨時会諸般の報告 (1)

                     平成30年11月20日

1 11 月 20 日 市長から、次の議案の提出を受けた。
  報 告 第 16 号 交通事故による市の義務に属する損害賠償の額の決定に係る専決処分の報告について
  報 告 第 17 号 交通事故による市の義務に属する損害賠償の額の決定に係る専決処分の報告について
  議 案 第 52 号 鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について
2 10 月 10 日 横須賀市において、第243回神奈川県市議会事務局長会議が開催され、大隅局長が出
          席した。
  10 月 18 日 逗子市において、平成30年度神奈川県市議会議長会正副議長研修会及び第201回神奈川
          県市議会議長会定例会が開催され、中村議長、大石副議長及び大隅局長が出席した。
  10 月 19 日 横須賀市において、神奈川県Aブロック市議会事務局長会定例会が開催され、大隅局
          長が出席した。
  11 月 1 日 小田原市において、湘南地方市議会議長会議員研修会が開催され、会議規則第143条第
          1項ただし書の規定により、くりはら、武野、西岡、日向、飯野、安立、納所、山田、
          前川、河村、伊藤、松中の各議員を派遣し、茶木議会総務課長が随行した。
  11 月 8 日 姉妹都市萩市親善訪問が実施され、会議規則第143条第1項の規定により、竹田、西岡、
    〜 9 日 日向、飯野、前川、河村、伊藤、吉岡の各議員を派遣し、美田書記が随行した。
3 監査委員から、次の監査結果報告書の送付を受けた。
  10 月 11 日 平成30年度平成30年7月分例月現金出納検査結果報告書
  11 月 5 日 平成30年度平成30年8月分例月現金出納検査結果報告書
     〃    財政援助団体等監査及び同監査の実施に伴う随時監査(サントリーパブリシティサービ
          スグループ及び共創計画部(文化人権課))結果報告書
     ───────────────────────────────────────
                   (出席議員  26名)
                   (14時00分  開議)
 
○議長(中村聡一郎議員)  定足数に達しましたので、議会は成立いたしました。これより平成30年11月鎌倉市議会臨時会を開会いたします。
 本日の議事日程は、配付いたしましたとおりであります。
 会議規則第142条の規定により、本日の会議録署名議員を指名いたします。19番 山田直人議員、20番 前川綾子議員、21番 河村琢磨議員にお願いいたします。
     ────────────〇─────────────〇────────────
 
○議長(中村聡一郎議員)  日程第1「諸般の報告」を議題といたします。
 内容は配布いたしましたとおりであります。
 ただいまの報告に御質疑ありませんか。
                   (「なし」の声あり)
     ────────────〇─────────────〇────────────
 
○議長(中村聡一郎議員)  日程第2「会期について」を議題といたします。
 お諮りいたします。今期臨時会の会期は、本日から11月27日までの8日間といたしたいと思います。
 これに御異議ありませんか。
                   (「なし」の声あり)
 御異議なしと認めます。よって会期は8日間と決定いたしました。
     ────────────〇─────────────〇────────────
 
○議長(中村聡一郎議員)  日程第3「報告第16号交通事故による市の義務に属する損害賠償の額の決定に係る専決処分の報告について」、「報告第17号交通事故による市の義務に属する損害賠償の額の決定に係る専決処分の報告について」、以上2件を一括議題といたします。
 理事者から報告を願います。
 
○齋藤和徳 行政経営部長  報告第16号交通事故による市の義務に属する損害賠償の額の決定に係る専決処分について、地方自治法第180条第2項の規定に基づき報告いたします。
 議案集その1、18ページをごらんください。
 本件は、平成30年6月27日、鎌倉市長谷五丁目13番32号先路上で発生した、都市整備部下水道河川課所属の軽貨物自動車による交通事故の相手方に対する損害賠償です。相手方は議案集に記載のとおりです。
 事故の概要は、都市計画課用務で軽貨物自動車を運転し、同所にて進行方向左側に駐車していた相手方車両を避けて通過する際、当方車両左ドアミラーが相手方車両右サイドミラーに接触し、双方が損傷したものです。その後、相手方と協議した結果、当方の過失と認め、車両修理費を支払うことで協議が調いました。損害賠償額は7,668円で、処分の日は平成30年10月30日です。
 引き続きまして、報告第17号交通事故による市の義務に属する損害賠償の額の決定に係る専決処分について、地方自治法第180条第2項の規定に基づき報告いたします。
 議案集その1、19ページをごらんください。
 本件は、平成30年7月4日、鎌倉市御成町20番21号敷地内で発生した、こどもみらい部発達支援室所属の軽貨物自動車による交通事故の相手方に対する損害賠償です。相手方は議案集に記載のとおりです。
 事故の概要は、発達支援室用務で同所駐車場に駐車していた軽貨物自動車に乗車する際、強風により運転席ドアが大きく開き、右側に駐車中の相手方車両左フロントドアに接触し、損傷させたものです。その後、相手方と協議した結果、当方の過失と認め、車両修理費及び代車費用を支払うことで協議が調いました。損害賠償額は車両修理費12万5647円、代車費用5万3460円、総額は17万9107円で、処分の日は平成30年10月30日です。
 以上で報告を終わります。
 
○議長(中村聡一郎議員)  ただいまの報告に対し、御質疑、または御意見はありませんか。
                   (「なし」の声あり)
 以上で報告を終わります。
     ────────────〇─────────────〇────────────
 
○議長(中村聡一郎議員)  日程第4「議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について」を議題といたします。
 理事者から提案理由の説明を願います。
 
○松尾崇 市長  (登壇)議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定について、提案理由の説明をいたします。
 議案集その1、5ページをごらんください。
 本件は、地方自治法第74条第1項の規定により、制定の請求のあった本庁舎の深沢移転に係る住民投票を行う条例を同条第3項の規定により意見を付して議会に付議するものです。
 それでは、本件条例案に対する私の意見を申し述べます。
 本件は、地方自治法の規定により必要とされる、3,005人分の連署を上回る8,270人分の連署をもって請求されたものであり、本件請求の意義の重さを真摯に受けとめております。
 本市では、これまで人口増加とともに市民ニーズを踏まえながら、公共施設の建設を進めてまいりました。その結果、現在築30年を超える公共施設が半数以上を占め、大規模改修や建てかえが急務となっております。
 しかし今後、人口が減少してくことが予想されていることや昨今の厳しい財政状況の中では、全ての施設を維持・更新することが困難な状況にあるため、鎌倉の魅力を継承しつつ、次世代に過大な負担を残さないことを前提として、新しい時代にあった価値を提供できるよう公共施設のあり方を見直すことを目的に、平成18年度から公共施設再編の具体的な検討を進め、平成24年3月に鎌倉市公共施設白書、平成25年4月に鎌倉市公共施設再編計画基本方針、平成27年3月に鎌倉市公共施設再編計画を策定いたしました。
 昭和44年に竣工した本庁舎は、平成23年の東日本大震災を受け、神奈川県が見直しを行った津波浸水想定の範囲内に敷地の一部が含まれていることや、整備から約50年が経過し建物や設備の老朽化への対応が大きな課題となっていること、行政需要の増大に伴う職員数の増加等から本庁舎だけでは執務スペースが狭小となり、分庁舎の建設や一部執務室の敷地外への移転など業務の非効率化が見られるとともに市民の利用にも支障を来していること、平成17年までに実施した耐震改修工事により、Is値0.6の耐震性能を確保し震度6クラスの地震に際して建物が倒壊または崩壊する危険性は低く、人命の安全確保は図られるものの業務継続に求められる通常の1.5倍のIs値0.9の耐震性能は有しておらず、大規模な地震が発生した場合の業務継続に不安があることなどを課題として捉えています。
 このため、平成27年度に本庁舎機能更新に係る基礎調査を実施し、現在の本庁舎が抱える課題、求められる機能・性能、必要な庁舎面積、配慮すべき条件等の整理を行った上で、平成28年度に学識経験者や公共的団体が推薦する者で構成する鎌倉市本庁舎整備方針策定委員会において、必要となる床面積2万5000から3万平方メートルに対してどのような本庁舎の整備パターンが考えられるか、「現在地建てかえ」「現在地長寿命化」「その他の用地への移転」の方策をベースに整理し、防災・減災、機能・性能、まちづくり及び時間・コストの観点から検討していただきました。
 その結果、現在地での整備では、地震や津波の直接的な被害による本庁舎の機能停止だけでなく、道路の寸断により庁舎周辺道路の通行に支障が生じ、庁舎が孤立して機能不全となるおそれがあり、市域全域に対する災害への対応が困難な事態に陥る可能性も考えられ、災害時の対応力・受援力の発揮など災害応急対策活動には適さないこと、風致地区による10メートル以下という建物の高さ制限により高層化ができないことや、周知の埋蔵文化財包蔵地のため、遺構に影響を与えないためには最大でも2階建ての高さの軽量な建築物とする必要があり、本庁舎に必要な床面積が確保できないこと、分庁舎や仮庁舎の整備や仮庁舎への引っ越し費用等も必要となり、移転に比べ多額の費用がかかることなどから、本庁舎は移転して整備するとの方針が本庁舎整備方針策定委員会から提言され、平成29年3月に鎌倉市本庁舎整備方針を策定しました。
 なお、当該方針の策定に向けては、本庁舎整備方針策定委員会における議論と並行して、幅広い年齢層からの市民感覚などを踏まえた意見を取り入れるため、パブリックコメント、市民アンケート調査を実施したほか、無作為抽出や市内の高校、大学への呼びかけにより参加いただいた方による市民対話を5回開催し、本庁舎に対する印象、本庁舎に欲しい機能、現在の本庁舎のあるこの場所をどのような場にしてほしいかなど、未来に向けた市民の思いを語っていただき、その結果を本庁舎整備方針策定委員会における議論の参考としていただきました。
 本庁舎の移転は、まちづくり、地域経済、市民サービス等に大きな影響を与えるため、本庁舎単体で捉えるのではなく、広くまちづくりの視点を持って検討することが必要であることから、平成29年度には他の公的不動産の利活用やその効果を含めて全市的な視点から適地の検討を行い、平成30年3月に策定した鎌倉市公的不動産利活用推進方針において、本庁舎の移転先を深沢地域整備事業用地内の行政施設用地と決定いたしました。
 その検討に当たっては、敷地は原則として市有地であること、必要となる床面積2万5000から3万平方メートルの本庁舎が整備できる土地の面積を有すること、本庁舎整備方針の基本的な考え方にそぐうことといった移転整備候補地抽出の基本的な考え方に基づき、梶原四丁目の野村総合研究所跡地及び深沢地域整備事業用地内の行政施設用地を候補地といたしました。
 次に、この二つの候補地について、市民の利便性及び全市的なまちづくりの視点から評価を行いました。
 まず、市民の利便性の視点では、市域全体に対し効率的にバランスのよい行政サービスの提供が可能であるかの検討を行い、鎌倉駅周辺、大船駅周辺、深沢地域の3拠点における行政サービスの提供が市民の利便性の維持とサービス提供の効率化の面ですぐれていること、深沢地域は人口重心が位置するなど、より多くの市民にサービスを提供することに適した場所であるとの結論に至りました。
 次に、全市的なまちづくりの視点では、人口減少が進行する中、一層のコンパクトな市街地形成が求められる状況においては、都市機能が集積する場所での行政サービスの提供が重要であり、これらの場所で行政サービスを提供することで、町の暮らしやすさの向上、行政サービスに係るコストの削減を図ることができます。
 このため、鎌倉駅周辺、大船駅周辺、深沢地域の三つの都市拠点に行政サービスを配置することが望ましく、また本庁舎機能を整備することで、周辺に一定の機能が集積することやにぎわいの創出などを想定すると、今後、新たなまちづくりを進める深沢地域整備事業用地内の行政施設用地の優位性が高いとの結論に至りました。
 さらに、こうした視点に加え、深沢地域整備事業用地内の行政施設用地に本庁舎が移転した場合、防災面や健康面のバリュー提供が可能となるとともに、総合体育館や消防本部との連携した整備等により建設コスト削減や、PPP、PFI等の官民連携の手法の導入により費用負担の縮減が可能になります。
 そして、深沢地域に本庁舎を移転整備し、深沢地域のまちづくりを推進することで、他の公的不動産の利活用に向けたポテンシャルを高め、さらに鎌倉駅周辺拠点や大船駅周辺拠点それぞれの資源や魅力、都市機能に磨きをかけることで鎌倉市全体の都市機能の強化や町の魅力向上につながることが期待できることから、深沢地域整備事業用地内の行政施設用地を移転先として決定したものであります。
 この判断に至る過程では、公募市民による市民対話や市民シンポジウム、42回延べ818人を対象とした出前講座、パブリックコメントの実施により、市の考え方を周知し市民意見を聞くとともに、これらを踏まえて学識経験者等で構成する鎌倉市公的不動産利活用推進委員会において議論を重ねていただきました。
 また、本庁舎整備に向けた取り組みの検討経過や内容については、鎌倉市議会総務常任委員会や全員協議会において報告を行うとともに、一般会計予算等審査特別委員会における審議を経て、市ホームページや「広報かまくら」への掲載、公共施設再編ニュースの発行、てのりかまくらの配布など、可能な限りの手法を尽くして情報提供と丁寧な説明に努めてまいりました。
 現在は、市議会に対する説明や「広報かまくら」に示したスケジュールのとおり、市民対話を実施するとともに鎌倉市本庁舎等整備委員会において議論を重ねていただき、本庁舎等整備基本構想の平成30年度中の策定を目指し事務を進めているところです。
 今回、制定請求のあった本件条例案は、市役所本庁舎移転整備に関する住民投票の実施を求めることを内容としたものです。住民投票が間接民主制を補完するための市民参加制度の一つとして位置づけられていることは認識しています。市民の生命・財産を守ることが全てに優先して取り組む施策であることに加えて、近年多発する自然災害に対して移転して整備する本庁舎が市民の生命を守る前線基地になると捉えており、本庁舎の移転整備が本市の将来を見据えた重要な事業であるからこそ、時間をかけてさまざまな角度から議論を重ね、その過程においては広く市民や知見を有する方などの意見聴取に努めるとともに、市議会にも報告等を行った上で、必要な予算について議決を得ながら事業を進めてきたところです。したがって、住民投票により、単に深沢地域への移転に賛成か反対を問うことは、これまで多くの方々と丁寧に議論して築き上げてきた結果と過程をないがしろにするものであり、到底容認できるものではありません。
 次に、本件条例案の各条の規定について申し上げます。
 本件条例案は、第1条「目的」において、「市役所本庁舎移転整備計画に関して、市民の意志を明らかにするための住民投票を行い、もって市並びに議会に民意を示すことを目的とする。」とし、第2条「住民投票の実施」において「本庁舎の深沢移転に賛成」と「深沢移転に反対」の二つの選択肢を示しています。さらに第6条「投票の方式」において、「住民投票をしようとする有資格者は、投票用紙の選択肢から一つを選択し、所定の欄にみずから丸の記号を記載しなければならない。」と規定しており、市民の意思について一括して深沢地域への移転に賛成または反対のいずれかを求めることになりますが、この二つの選択肢だけでは市民として明確な意思を示すことは困難であると考えます。深沢移転に反対を選択した市民が現在地での整備を望んでいるのか、大船地域や腰越地域、玉縄地域での整備を望んでいるのか、本庁舎の整備をどのように行うべきと考えているのかを意思表示することはできません。まさに、第1条「目的」に規定する「市民の意志を明らかにする」との条例の目的と合致しない投票制度となっています。
 さらに言えば、深沢の定義が示されておらず、深沢地域全体を指すのか、移転先としている深沢地域整備事業用地の行政施設用地のみを指すのかが不明です。仮に、深沢地域全体を指すのであれば梶原四丁目の野村総合研究所跡地も含まれることになり、仮に住民投票の結果が深沢移転に反対となった場合、本庁舎の移転先を深沢地域とすることができないだけでなく、現在地での建てかえや長寿命化が難しいとの判断がある中では、大船地域や腰越地域、玉縄地域で適地を再検討することになりますが、これらの地域には本庁舎を建設することができるような市有地は存在せず、新たに土地を取得するための多額な費用が必要となるため、実質的に移転することができなくなる可能性が高くなります。
 第9条「情報の提供」第1項は、「市長は、住民投票の適正な執行を確保するため、本庁舎整備計画その他必要な情報、資料を、第2条各号の選択肢に沿い、市民へ公平かつ公正に提供するよう努めるものとする。」と規定しています。一般的な解釈として、住民投票の適正な執行を確保するための情報提供とは、投票の日時、場所、方法等について正確な情報を提供することと考えられますが、同項では、「本庁舎整備計画その他必要な情報、資料を、第2条各号の選択肢に沿い、市民へ公平かつ公正に提供するよう努めるものとする。」とされており、本件条例案作成者の意図がつかめません。また、本庁舎整備計画は存在せず、その他必要な情報、資料についても具体性に欠けており、提供することが困難です。さらに「第2条各号の選択肢に沿い、市民へ公平かつ公正に提供するよう努めるものとする。」という部分については、市はこれまでの経過等を示した資料を提供するにとどまるため、深沢移転に反対の資料を公平かつ公正に提供することは極めて困難であると考えます。
 本件条例の制定の請求は地方自治法を根拠としたものですが、本件条例に基づいて実施される住民投票は法律に根拠を有するものではなく、当然、地方自治法の規定により実施されるものでもありません。本件条例案第12条「投票結果の効力」において、住民投票を実施することではなく、住民投票の結果が地方自治法の定めた市民による民意を十分に反映したものであるとされていますが、これが何を意味するのか不明です。
 また、本件条例案には住民投票の成立要件についての規定がないため、市民の少数意見だけが反映されるおそれがあり、その結果は民意を十分に反映したものとはなりません。
 本来であれば、本庁舎の位置は間接民主制を採用する現在の法制度において、市民の意思に基づいて代表者として選出された市議会議員のうち、出席議員の3分の2以上である特別多数の同意により変更するものであるところ、その決定方法では不十分であるとするのが本件条例の制定意図であると思われますが、仮に有資格者のうち少数しか投票を行わなかった場合であっても、その結果を民意を十分に反映したものとするのは本末転倒と言わなければなりません。住民投票の結果が民意を十分に反映したものであると言おうとするのならば、少なくとも本件条例において住民投票が成立したと認められるために必要な要件を定める必要があります。
 成立要件についての明確な基準はないと考えられますが、常設型住民投票条例を制定している自治体のうち、成立要件を設けている多くの自治体が投票資格者総数の2分の1以上の投票数をもって住民投票が成立するとの規定を設けていることを鑑みて、投票の成立要件は投票資格者総数の2分の1以上の投票数を有することが望ましいと考えます。同時に明確に記されてはいませんが、本件条例案の意図は、過半数を獲得した選択肢を住民投票の結果とするものと読み取れるところですが、地方自治法が市議会議員のうち、出席議員3分の2以上である特別多数の同意を必要としている本庁舎の位置の変更を、投票を行った者の過半数の意思で決定しようとすること自体にも疑問を感じるところです。
 次に、市長及び市議会は、住民投票の結果に拘束されねばならないという趣旨の条例を制定することについて申し上げます。地方自治法第14条第1項の規定により、普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて、地域における事務に関し条例を制定することができるところですが、本件条例案第12条「投票結果の効力」の規定は、次の理由により法令に違反する疑いが極めて高いため、本件条例を制定することは同項の規定に違反すると考えます。
 地方自治法第第96条第1項に、「普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。」と規定され、同項第1号に「条例を設け又は改廃すること。」と掲げられており、また同法第4条第1項に「地方公共団体は、その事務所の位置を定め又はこれを変更しようとするときは条例でこれを定めなければならない。」と、同条第3項に「第1項の条例を制定し又は改廃しようとするときは、当該地方公共団体の議会において出席議員の3分の2以上の者の同意がなければならない。」と規定されています。
 これらの規定により、本庁舎の位置は出席議員の3分の2以上の賛成をもって条例により定めなければならないものです。当然のことながら、市議会の議決は全て重いものであり、それに対して異議がある場合等の手続の厳格さと照らしても、その重要性には疑いの余地はありませんが、本庁舎の位置を定める条例を定めることについては、出席議員の過半数による通常の議決よりもさらに重い、出席議員の3分の2以上の賛成による特別多数議決が要件とされているものです。
 一方、本件条例案第12条「投票結果の効力」は、市長及び市議会は住民投票の結果に拘束されねばならない旨を規定しようとするものであり、通常の議決よりもさらに重い特別多数議決により議事を決する市議会の権限を無にするものであります。鎌倉市役所の位置を深沢地域整備事業用地内の行政施設用地に改めようとする鎌倉市役所の位置を定める条例の一部を改正する条例が成立するには、出席議員が26人であればそのうち18人以上の同意が本来必要であるにもかかわらず、仮に本件条例に基づく住民投票を行い、第2条第1号に掲げる本庁舎の深沢移転に賛成が多数となった場合には、同意の意思を持つ出席議員が圧倒的少数であったとしても当該条例が成立することとなります。これは、地方自治法に規定される議会の権限を実質的に否定することにほかなりません。また、同意の意思を持つ出席議員が圧倒的少数であった場合に、各議員の表決を無効とし、異なる決定を議長が下すのか、不同意の意思を持つ出席議員を強制的に退席させるのか、強制的に同意の意思表示をさせるのかなど、どのような方法により市議会を拘束しようとするものなのかも不明です。
 地方自治法第148条の規定により、普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し、及びこれを執行するとされ、同法第149条第1号の規定により、議会の議決を経べき事件につきその議案を提出することは普通地方公共団体の長の担任事務と定められているところ、本件条例案第12条「投票結果の効力」の規定は、投票結果と異なる議案を提出してはならないと市長を拘束し、市長の権限を侵害するものであると考えます。
 条例を根拠とする住民投票の結果の法的拘束力については、裁判例でも「住民投票が法的拘束力を有せず、法的には世論調査ないし参考資料としての意味しか持ち得ないことは、控訴人らの指摘するとおりである。」、「仮に、住民投票の結果に法的拘束力を肯定すると、間接民主制によって市政を執行しようとする現行法の制度原理と整合しない結果を招来することにもなりかねないのである。」のように言及されているところです。
 また、総務省作成の資料においても、投票の結果がその地方公共団体の団体意思、議会又は長その他の執行機関の行動を拘束する拘束的住民投票については、法律に根拠がある場合にのみ可能と解されているとしています。これは地方自治法という法律で定められた議決という議会の権限又は事務を管理し、執行するという長の権限の特例を定めるためには、同等の形式的効力を持つ法律で定めなくてはならず、形式的効力が下位である条例によることはできないという趣旨であると解されます。
 以上のことから、本件条例案第12条「投票結果の効力」の「市長及び市議会は、住民投票の結果、これに拘束されねばならない。」という規定は法令に違反する疑いが極めて高く、本件条例を制定することは地方自治法第14条第1項の規定に違反すると考えます。
 次に、本件条例に基づいて住民投票を実施する場合の問題点について申し上げます。
 本件条例案第3条「住民投票の執行」第2項において、「市長は、住民投票の管理及び執行に関する事務を鎌倉市選挙管理委員会に委任することができる。」とされていることから、この委任を受ける立場として鎌倉市選挙管理委員会に意見を求めたところ、次のような意見が示されました。
 第5条、投票有資格者において、投票資格を有する者について規定しているが、その居住要件、公職選挙における欠格事項に該当する者の取り扱い等について明確にされておらず、また投票の方式、1人1票、秘密投票、資格者名簿の調製の要否、投票所及び期日前投票所の設置箇所数、設置期間、不在者投票制度の要否等住民投票執行上、基本となる事項が定められておらず、住民投票のありようが読み取れない。そのため、住民投票の執行に要する経費の積算も困難である。投票所及び期日前投票所の設置箇所数等は、投票する者の利便と住民投票の執行に要する経費に大きく影響する事項であることから、住民投票制度を創設する段階で議論されるべきことである。さらに、資格者名簿の調製について規定されないことは投票の資格を有する者が特定されないことを意味するため、住民投票制度の根幹に係る重要な規定が欠落していると言える。
 また、第8条、無効投票の規定により無効とする投票については、丸の記号のほか、他事を記載したものを追加すべきである。
 第13条、委任の規定により、住民投票の施行に関し必要な事項は選挙管理委員会が規則を定めることとされているが、住民投票の管理及び執行に関する事務を受任できる立場にすぎない選挙管理委員会が規則を定めること、さらに言えば前述のように本来であれば条例で定めなければならない重要な事項までも含めた規則を定めることに疑問を感じる。
 なお、これとは別に本件条例案には制定の本旨と無関係ではありますが、誤字や条例立案技術上の問題が散見されます。
 これまで述べてきたことから、本件条例の制定には意義を見出せないばかりでなく、違法であると考えるため、私は強く反対するものです。
 私は、本庁舎整備という重要な事業を、地方自治制度の根幹をなす議会制民主主義のもとで、これまでどおり市民の負託を受けた議員の皆様の御意見を賜り、市民への情報提供及び市民との対話を積極的に行い、真摯かつ丁寧な説明に努め、御理解を得ながら進めていく所存です。
 議員各位におかれましては、本件条例について厳正なる御審議と賢明なる御判断をいただくようお願いいたします。
 
○議長(中村聡一郎議員)  ただいま議題となっております、議案第52号鎌倉市本庁舎整備に関する住民投票条例の制定については、地方自治法第74条第4項の規定により、条例制定請求代表者に意見を述べる機会を与えなければならないとなっており、同法施行令第98条の2第2項の規定により、条例制定請求代表者が複数であるときは、意見を述べる機会を与える条例制定請求代表者の数を定めるものとされています。
 お諮りいたします。運営委員会の協議もあり、条例制定請求代表者の意見を述べる機会について、日時は平成30年11月22日午前9時30分から、場所は鎌倉市議会議場とし、意見を述べる機会を与える条例制定請求代表者の人数は6人以内、意見を述べる時間は全体で30分以内で行うことといたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
                   (「なし」の声あり)
 御異議なしと認めます。よって条例制定請求代表者の意見を述べる機会につきましては、平成30年11月22日午前9時30分から鎌倉市議会議場において意見を述べる機会を与えるものとし、条例制定請求代表者の人数は6人以内、意見を述べる時間は全体で30分以内で行うことに決定いたしました。
 なお、地方自治法施行令第98条の2第1項及び第3項の規定により、ただいま議決した事項を条例制定請求代表者に対し通知するとともに、告示及び公表いたします。
 お諮りいたします。運営委員会の協議もあり、本日は説明を聴取するにとどめ、延会いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
                   (「なし」の声あり)
 御異議なしと認めます。よって、本日はこれをもって延会することに決しました。
 なお、残余の日程については、来る11月22日午前9時30分に再開いたします。ただいま御着席の方々には改めて御通知いたしませんから、御了承願います。
 本日はこれをもって延会いたします。
                   (10時02分  延会)

 平成30年11月20日(火曜日)

                          鎌倉市議会議長    中 村 聡一郎

                          会議録署名議員    山 田 直 人

                          会議録署名議員    前 川 綾 子

                          同          河 村 琢 磨